古田ラジオの婚活研究所

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「女性は2人以上産むことが大切」発言で考えるべきこと

大阪市鶴見区の市立茨田北(まったきた)中学校の2月末の全校集会で、

「女性にとって最も大切なことは、こどもを二人以上生むことです。これは仕事でキャリアを積むこと以上に価値があります」

と校長先生が発言した件関して波紋が広がっています。

詳細、どんな事を話しているのかについては、こちら(Web魚拓)に要約が載っており、女性のキャリアの多様性を無視しているという事で絶賛批判の的ですが、

婚活的にはもっと気になる点があります。

  • 「女性は2人以上産むことが大切」とセットで気になる「子育ては、必ず夫婦で助け合いながらするもの」

該当の発言を引用します。

今から日本の将来にとって、とても大事な話をします。特に女子の人は、まず顔を上げて良く聴いてください。

女性にとって最も大切なことは、こどもを二人以上生むことです。これは仕事でキャリアを積むこと以上に価値があります。

なぜなら、こどもが生まれなくなると、日本の国がなくなってしまうからです。しかも、女性しか、こどもを産むことができません。男性には不可能なことです。

 

「女性が、こどもを二人以上産み、育て上げると、無料で国立大学の望む学部を能力に応じて入学し、卒業できる権利を与えたら良い」と言った人がいますが、私も賛成です。子育てのあと、大学で学び医師や弁護士、学校の先生、看護師などの専門職に就けば良いのです。子育ては、それ程価値のあることなのです。

 

もし、体の具合で、こどもに恵まれない人、結婚しない人も、親に恵まれないこどもを里親になって育てることはできます。

次に男子の人も特に良く聴いてください。子育ては、必ず夫婦で助け合いながらするものです。女性だけの仕事ではありません。

 

人として育ててもらった以上、何らかの形で子育てをすることが、親に対する恩返しです。
子育てをしたら、それで終わりではありません。その後、勉強をいつでも再開できるよう、中学生の間にしっかり勉強しておくことです。少子化を防ぐことは、日本の未来を左右します。

 

学校日記(「全校集会 朝礼講話 要旨(2016-03-12)」より引用。読みやすくするため改行)

この内容の問題になっているのが、前段の部分ですが、自分が気になるのは以下の部分です。

もし、体の具合で、こどもに恵まれない人、結婚しない人も、親に恵まれないこどもを里親になって育てることはできます。

次に男子の人も特に良く聴いてください。子育ては、必ず夫婦で助け合いながらするものです。女性だけの仕事ではありません。

前段の「女性は2人以上産むことが大切」と合わせて考えると、どうやら、この校長先生は、「体の具合で、こどもに恵まれない人」とあるように、(やむを得ない事情を除けば)結婚できるやつはして子供を作れと思っているようです。

要するに「少子化対策=子供を産ませる=結婚させる」という図式です。

 

  • 少子化対策」とセットである限り婚活は強制され続ける

ただ、こうした考えをしている人は結構多くいます。

婚活業界の人と話していると、こんなような「少子化対策のために婚活が必要」なんてことをおっしゃる人も多くいますし、事実、少子化対策の一環として、婚活パーティや婚活サポーターの育成などの事業が行われています。一時期「税金で婚活パーティ」などと批判されましたが、今年(平成28年度)も約5億円の予算が付けられています。

婚活業界が業界を挙げて錦の御旗としているのが「少子化対策」と「地域振興」ですからある意味仕方がないことなのかもしれません。

でも、「少子化対策」と「地域振興」の解決を目的としている限り、「婚活は30歳過ぎて結婚相手が見つからなかったら必ずやるもの」だとされ続けるでしょう。

これにはメリットとデメリットがあります。

少子化対策は国の喫緊の課題ですから、当然国が率先して補助すべきものになるでしょう。つまり、補助金も支給され、国のお墨付きがつく。これがメリット。

一方で、少子化対策の一環として婚活をしなければならないのだとしたら、先の校長先生のような発言は一定の説得力を持つことになるはずで、彼の発言を批判するいわれはないことになります。

そして、その先にあるのは結婚したくなくても無理やり婚活しないといけないという社会の到来です。

 

  • 「結婚する/しない」の自由は婚活の自由市場を支える根本

そもそも、婚活とは結婚する「時期」と「相手」の自由化でした。

つまり、結婚を望んだ人がいつでも、自由に相手を見つけられる。

これが婚活の理想だったはずです。

婚活市場というオープンな市場が整備されたことによって、この自由化はある程度成功したといえるでしょう。

こうしたオープンな婚活市場を成り立たせている最も重要な要素が、婚活する/しないの選択は本人次第だということです。

なぜなら、婚活を「みながしなければならない」ものだとした瞬間、「理想の相手が見つからない」「結婚相手が見つからない」「婚活で疲れる」といった、婚活自体が持つ矛盾をサービス提供側が一手に引き受けなければならなくなるからです。

そして、これらを100%解決することなどどだい無理。

婚活という産業が今後も発展していくためには、婚活をするかしないかは(本音はともかくとして)あくまでその人の自由であるという建前は絶対に崩すべきではないでしょう。

ちなみに、国立社会保障・人口問題研究所が実施した「第14回出生動向基本調査結婚と出産に関する全国調査(夫婦調査)」(2011年)によれば、夫婦がほしい理想の子どもの数は2.42人。だが、それが実現できない理由の66.9%が「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」とのことです。

 

少子社会日本―もうひとつの格差のゆくえ (岩波新書)

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